奇門遁甲とは

 奇門遁甲は、古く中国にあった兵法で、戦機を捉えて自国の軍を勝利に導き、国家に平安と繁栄をもたらすことのできる、 秘中の秘の学問とされていたものです。紀元前206年に秦が滅亡した後、劉邦が挙兵するに当たり、 張子房が奇門遁甲をもって補佐し、漢建国の功を果たすとともに、奇門遁甲の完成者として『漢書』にも記されております。
 紀元前220年に後漢が滅亡し、三国時代を迎えることになり、ここで登場したのが『三国志』中で有名な諸葛孔明であり、 奇門遁甲を用いて、数々の戦功を上げたと言われておりますが、その真はどうであったか、詳しい内容となりますと、 ご存じの方はほとんどいらっしゃらないようです。
 孔明は、181年生~234年没、天文、地理に精通し、蜀国の劉備玄徳に三顧の礼をもって迎えられ、 奇門遁甲により百戦百勝し、天下三分の計を輔佐したとも言われております。
 奇門遁甲が、いかに戦機を捉える学問であるといっても、核兵器、化学兵器の現代にあっては、 もはや戦機など問題ではなく、奇門遁甲の真伝が仮にあったとしても、現代には通用しないもの であると考えるのが妥当なのです。現在は、その個人の命運に害を及ぼすものを敵として、これを 征服してこそ目的が達成され、より良き生活への向上発展に繋がっていくものですから、個人の希望、 願望、目的を達成するための方法論へと移行発展し、現在に至っているのです。つまり、
    “内なる敵に打ち勝つための法”
へと変貌を遂げたのであります。
 多くの方々は、運命は変えられない宿命である。と思い込んでいるようですが、奇門遁甲他によって “運命は変えられるものである”ということです。ですから、

“奇門遁甲とは、より良き生活のための最も積極的な造命開運法である。”

と言うことができます。その活用法は、大きく分けて次の二通りあります。

  • (A) 命運を良化するための基本的活用法(基本的大気造命)
  • (B) 希望・願望を達成するための目的別活用法

 (A)は、命理学によって知り得た個々の生命エネルギーを、方位エネルギーによって調和を図るために 随時活用するものです。生命エネルギー、方位エネルギーについては、後で詳しく説明することにします。 (B)は、具体的な希望、願望、目的を達成するために活用するものです。
 目的別活用法を列記しますと、

  • ①  求財、借財、財利の向上
  • ②  店舗開店、会社設立
  • ③  転  居
  • ④  求  縁(縁結び)
  • ⑤  鍬入れ、地鎮祭、改築、増築
  • ⑥  求医、治病
  • ⑦  才能・能力発揮、学力向上
  • ⑧  試験合格
  • ⑨  お宮参り
  • ⑩  旅  行
  • ⑪  航空機搭乗
  • ⑫  葬儀、遷墓
  • ⑬  紛争・訴訟解決
  • ⑭  地位向上、名誉獲得

等々、その活用目的は人生諸般、あらゆることに係わると言っても過言ではなく、その使用法はまことに 多種多様でありますが、(B)は(A)の応用と言えます。
 しかしながら、奇門遁甲によって、希望、願望、目的を達成し得るとは言いましても、あらゆることには原 因と結果の必然性があり、原因のないところに結果はありませんので、そこには限界があるのです。
 例えば、身のほども知らず、一介のサラリーマンが大富豪となりたいと望むのは、それは野望であって 願望ではありません。そのような野望はいくら遁甲でも果たし得られるはずはないのです。さらに社 会的地位にしても、分もわきまえず、努力もしないで社長になりたいとか、総理大臣になりたいとか いうのは気狂いじみた野望にしか過ぎないのです。社会的一流人となるためには、健康であって、一業 に徹し、かつ、五十年、六十年とかかって上昇していくものですから、突然変異的に出世できるもので はないのです。また、全くボーダー・ラインにも至っていない受験生を、一回や二回の遁甲活用で希望の 大学に合格させるなどといった奇跡を起こすことなどできないのです。
 ましてや、遁甲によって相手を自分の思うように自由自在に操ることができるとか、憎い相手を法に触れる ことなく、自分が手を下さなくとも殺すこともできる、などと言っている人がおりますが、そのようなことは絶 対にできません。そんな悪事のために遁甲があるのではないのです。そうしたことを宣伝したり、公言した りするのを見聞きするにつけ、慄然として、鳥肌が立つ思いがするのです。『煙波釣叟歌』に、

“心卑しき人に遁甲を教えるべからず”

 と言われていることを深く肝に銘じておくべきです。遁甲をどうか誤解しないようにしてください。 自己の悪い性情、言動、対人関係等、自分を変革し改めることによって、相手の人の感じ方や見る目 が好意的となり、その感応がまた自己に跳ね返って来ることによって、さらに自己が向上、良化して 行くという弁証法的向上発展の契機となるのが遁甲なのです。
 ですから、正しく遁甲を活用するなれば、その効は目を見張るものがありますが、そこには厳然た る限界があって、その限界以上のことは、医師、法律家、建築家などのあらゆる専門家に委ねるべきなのです。

武田考玄著 『目的達成法としての 奇門遁甲学入門』より抜粋。

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